第150章 涙色の答案用紙(14)※家康様side
薄暗い外。
雨はポツポツと降り、水溜りに落ちた。
行き場を失ったように揺れる、
二つの傘。
政宗の襟元を掴んでいた腕を離す。
身長差でどうしても俺が目線が見上げる立場になり、見下ろされるのが本当、癪に触る。
「そんな台詞吐きたきゃ、自分のモノにしてから言え」
「…………っ」
拳が震える。
ギリッと歯を食いしばり、顔を背け視界に映る二つの傘に向かって足を動かす。腹経つけど、言い返せない。
(休日……俺も誘うはずだった)
北海道旅行の後、新学期で答えあわせして、その週はデートに誘うつもりだった。
ひまりが夏休み中に、行きたいって騒いでた遊園地。部活やテストで忙しくなる前に、連れて行こうと計画……今の状況なら、政宗と約束してなくても断られただろうけど。
わかっていても。
それでも誘いたくて昨夜、家を訪ねた。
(政宗の所になんて、行かせたくない)
腕を伸ばし自分の緑色の傘を拾った後、すぐ隣でそれほど風もないのに、回り続けるひまりのピンク色の傘も拾い上げる。
「髪の香り、髪型、次は……唇だな。修学旅行までに俺の色に変えてやるから、指くわえて待ってろよ?」
「俺が、戻したいのは笑顔。ひまり本来のね」
感じの悪い笑顔を見せる政宗に、俺の方の傘を押し付ける。ひまりの傘の水気を払い落とし、折り畳むと……
まだ、明かりがない部屋の窓。
それを見上げる。
きっと今頃ひまりはあのくまの縫いぐるみを抱え、辛い表情をしているのは、何となく予想できた。
ーーいい歳して、まだ縫いぐるみとか。
ーー良いの!初めて作った思い出が、いっぱいくまたんには詰まってるんだから!
ーーはいはい。確かに、プロ顔負けぐらい。……良く出来てるかもね?
ーーふふっ!遠回しに褒めてくれてありがとう!
一刻も早くあの笑顔が見たい。