第149章 涙色の答案用紙(13)
その日の放課後。
大雨警報と雷注意報が出て、部活はなくなった。前だったら、がっくり肩を落として残念がる私がいたのに……。
もう、今は抜け殻みたい。
頭が色んな事でモヤモヤして……
(天音ちゃん……)
朝、何か話しがあったみたいだけど、あれから特にこれと言った話もなかったし……。明智先生の話も気になる……。
無くなった私の携帯用トリートメント。天音ちゃんの髪の香り。嫌な連想を想像する前に、搔き消す。
家康も何だか私のこと腫れ物に触るみたいに、ぎこちない。でもそれは、私も同じで一回も目を合わせて話が出来なくて、天音ちゃんとの関係聞くのが怖くて……。
本当は聞きたいこと、いっぱいある。
昨晩も、家まで訪ねて来てくれた。
多分、これからの登校の話かなって思って、メールしたけど……わかった。って一言返信があっただけ。
(織田先生は、逃げても始まらないって)
ちゃんと、わかっていても。
どんどん悪い方向に事が進んでいく。
(こんな状態で修学旅行なんて、行ったら……)
きっと、皆んなに迷惑かけちゃう。
何とかしないと……。
「おい!前を見て歩け!」
グイッと後ろに引かれて、目の前を走り去る車。ぼっーとしていた意識を、急いで戻せば歩行者信号は赤色。
「ご、ごめんねっ。ちょっと、ぼーっとしちゃって」
「だろうな。さっきから上の空みたいな顔して、俺の話に相槌打ってだけだしな」
政宗のちょっと怒ったような声。私はごめんね!と、もう一度謝ると政宗はやれやれみたいな表情を浮かべ……傘を持っていない方の手で、私の肩を抱きそのまま自分の胸元まで引き寄せた。