第149章 涙色の答案用紙(13)
何で佐助くんがここに居るのかも、わからないけど凄く大切な話をしているのは、ひしひしと伝わってくる。
「皆さんが手元に持っている手紙、いや文は、恐らくただ……再会を願ったモノ。そして、風化したあの文は未来の自分に宛てたのでは……と、考えるのが自然かと」
「まるで、タイムカプセルだな」
「戦国姫が何かを知らせる為に文を書き埋めたのか……。もしくは、皆さんと同様、未来の自分に書いて風化するのをわかった上で、箱には入れず埋めたのか……。どちらも俺の憶測です……」
珍しく佐助くんは、普段の自信のある声から光が消え……
「『時を越える力が現れても、決して愛する人を、自分を見失わないで』あの文からは、そこだけしか……」
(一体……何の話をしているの…)
佐助くんの話を聞けば、聞くほど、頭が混乱してくる。
「……あの書物は、何故か馬鹿が持っているようだからな。この学園に全員揃った時に吐いた」
先生の言葉に私はハッと顔を上げ、出しそうなった声を両手で抑えた。
(馬鹿って……織田先生が呼ぶのは…)
家康だよね……。
書物って……もしかして、昔から大事に持ってたあの本のこと……?
気付かない間に、
その場に立っていた私。
ーーむかしむかし、
ある戦国武将と姫君は恋に落ちました。
懐かしい声が脳裏を掠めた瞬間。
グラつく足元。
「っ!!」
階段を踏み外し踊り場で尻餅をついた頃には、もう佐助くんの声は聞こえなくなっていて……
「何、一人で腰を抜かして遊んでいる」
先生が階段下で笑っていた。