第149章 涙色の答案用紙(13)
外から聞こえる激しい雨音。
朝の晴れ間が嘘のように消えて、空は黒い渦を巻き出して、私は自分の肩を抱きながら廊下を歩く。
(雷……鳴らないよね?)
昼休み、お弁当を教室で食べた後。
保健委員の私は、明智先生に放送で呼ばれ一人、保健室に向かっていた。
(明日の、身体測定の準備か何かかな?)
そんな事を考えながら……
窓から視線を外す。
昔から雷だけは本当に苦手。
何でかわからないけど……
あの音を聞くと、どこか遠くに連れていかれるような気がして……。
小さい頃から、雷が鳴ると泣いてばかりいた事を思い出す。まだ小学生低学年ぐらい一緒に布団に包まってたけど……。
いつからだったかな……。
家康が急にびっくりするぐらい優しくなって、背中さすりながら側に居てくれて……泣き止むまで、待ってくれて。雷が怖い理由を話したら、絶対バカにすると思ったのに。
ーー何処にも
連れてかれないから、大丈夫。
階段を降りて保健室前の廊下に出ようとした時。
「ワームホールの存在が強まっています」
その声にピタリと足が止まった。
(この声、佐助くん……?)
「……そうか」
(それと、織田先生……)
何で、佐助くんと先生が一緒に。
面識があったことに驚きを隠せず、
私は思わず踊り場に降りる一歩手前。
最後の一段でしゃがみ込む。
「彼女の心の影響で、もしかしたら強まるのではないかと」
「……時を越える力か。俺はまだ半信半疑だがな」
二人の声から緊迫した空気を感じて、降りるに降りれずつい耳を立ててしまった。
ワームホール?
彼女の心?
時を越える力?
そのキーワードのような言葉に、
何故か胸がざわつく。