第149章 涙色の答案用紙(13)
その瞳に
吸い込まれそうになった時。
ガラッ。
私の視線はすぐに反応して……
「……お!おはよう白鳥ちゃん!」
「徳川〜昨日、先生怖い顔してたぞ〜」
翡翠色の瞳とぶつかる。
咄嗟に逸らした視線。感じ悪かったかもしれないと、思いながらシャーペンを持っていた手がカタカタ震えだす。
「ひまり!ほら!お菓子食べなよ!ね!?」
私の様子に気づいて、ゆっちゃんは政宗に「私の分はないわけ!?」とまたノートでパンパン叩きだして……
(ありがとう……)
きっと、気を紛らわせてくれてるんだろうなって、思った。
私はそんな二人のやり取りに救われ、震えていた手が止まる。そして、緊張をほぐす様に……
大きく深呼吸して
心を落ち着かせた時だった……
「ひまり」
ドクンッ。
今度は心臓が脈を一つ打って、揺れる。
二日ぶりに名前を呼ばれ、またカタカタ震え出しそうな手を机の下に隠しながら、ゆっくり顔を上げようとしたら……
「ひまりちゃん。おはよう」
金色の髪に光る……
四つ葉のモチーフのヘアピン。
ガタッ!!
家康の隣に立った天音ちゃんを、先に見てしまって……。
気づいたら席を立っていた。
「お、おはよう!そのヘアピン可愛いね!ちょっとお手洗い行ってくる……ねっ!」
椅子を後ろに引いて、
二人に背中を向けた瞬間。
「ひまり!」
後ろから腕を掴まれる。
それが、誰の手かわかると、
じわっと熱くなる目頭。
(普通にするって決めたのに……)
今までどんな風に挨拶してた?
今までどんな風に話をしてた?
今までどんな風に顔を見てた?
(まだ、全然だめ……っ…)
苦しくなる胸。