第149章 涙色の答案用紙(13)
朝のホームルーム前。
私の席に集まったゆっちゃんと、政宗と話をしながら、一冊のノートに修学旅行の行きたい所をピックアップして、書き込んで行く。
シャーペンの芯をカチカチ。
初日は、班行動。
二日目は丸っと一日、自由行動。
三日目は帰りまでの間、自由行動。
「自由行動で、舞妓さん体験とかレンタル着物もして良いんだよね?楽しみ〜私、七五三以外、浴衣しか着たこないから!」
「お前は、似合いそうだな。小春川は、アレだな?新選組とか男装のが……」
パコーンッ!
政宗の肩をゆっちゃんは凄い音を立てて、丸めたノートで叩く。
「うっさいわね!私はセクシー担当だから?花魁様に決めてるの」
「ふ、ふ。ゆっちゃんなら、きっと何着ても似合うよ?天音ちゃんにも聞かない……あ……自由行動だから、別かもしれないね!」
慌てて沈みかけた声を戻して、私は嵐山でしょ?あとは〜〜、頭の中空っぽになるのが怖くて、ひたすらノートに書き続ける。
「ひまり……」
ゆっちゃんの曇る声。
「あと!あの長い赤い橋!えっと、なんだっけ?確か〜〜ってか、珍しいよね?ここから、京都近いのに修学旅行先なんて!私は嬉しいけど!」
内心胸がズキズキしてる癖に、私は明るい声を張り上げた。
動く口。勝手に、無意識に、ポンポンって出てくる。
「お前、さっきから喋りすぎだ。ほら、コレ食っとけ」
え??
頭に何か重みを感じて目を上に向けると、政宗の大きな手のひらと小さな包みが乗っていて……
「秋新作の茶菓子。ちょうど……」
政宗は私の編み込みしていない方の髪をくしゃっと掴み、
「この香りに似てるからな」
至近距離に迫った青い瞳。