第148章 涙色の答案用紙(12)※家康様side
足元に突然、放り投げられた鞄。
俺は、それを拾い上げると汚れた部分を手で払う。
「……どうも」
何で、俺の鞄を持って来たのか知らないけど、お陰で取りに行く手間は省けた。
「何だ?ひまりにでも、愛想つかされたか?」
冗談でも今は、言われたくない台詞。
けど、今の俺には言い返す気力もない。
肩に鞄を掛け、片腕を握ると顔を横に向ける。すると、先生は石碑に背中を預け御構い無しに口を動かす。
「あれだけ瞼を腫らせるぐらいだ。原因は、貴様しかいないからな」
俺を煽りたいのか、何でもお見通しだとゆうような口ぶり。
「忠告したはずだ。後で後悔する日が来るぞ。と、な」
「何の話です?もしかして大会の時のこと……言いたいんですか?」
周りの歓声で
最後は聞き取れなかったけど、
ーー貴様が勝手に焦らし、想いを黙っているのは自由。俺はどうでも良いが……
確か、そんな事は言ってた。
もう遅い。
悔しいけど今の俺は、
まさに後悔の最中にいる。
「また、後回しにする気か?」
「別に……お世話とお節介はいりませんから」
「貴様が足掻き苦しむのは勝手だ。ただな……」
途中で遮る言葉。
気になって横向いたら突然胸倉を掴まれ、目の前に鋭い目が光った。
「……本当の意味で失い。その後にする後悔は遅い。肝に銘じとけ」
それだけ、言い残して。
俺の掴んだ胸倉を離すと、何事もなかったように校舎裏に消えた。