第148章 涙色の答案用紙(12)※家康様side
朝、アラームが
鳴り出す前に目が醒める。
いつ寝たかのか、
それさえも記憶にない。
仰向けに転がり、自室の天井視界にぼんやりといれながら枕元にある携帯を顔の前に持つ。
(折り返しも、返信もなし……)
ひまりの名前は、
一昨日の日付でおわっていた。
早く、誤解を解きたい。
けど、例え間違いでも。
白鳥にした行為は消せない。
(俺は何やって……)
プロフィール帳。
もしあれをあの時、直接渡していたら何かが変わってたのかと悔やんだ。
ほんと今更。
そんなことしか頭に浮かんでこない。
他にもあった。
俺が勝手にひまりを追わせてただけ。伝えてきたつもりでも肝心な事を伝える前に……あんな想いさせて自業自得。
額の上に手を当てる。
瞼の裏に浮かぶ、
政宗の腕に抱かれるひまりの姿。
俺はベットから起き上がり、
カーテンを開ける。
部屋に差し込む光。
俺の気分とは正反対。
嫌味みたいに晴れた青空。
それを暫く見上げ、
着替えを済まし学校に行く支度をする。
水浸しで皺くちゃで中身も読めないような手紙。
オルゴールと本だけは机の上に置いて、手紙だけ鞄の中に入れた。
(口で伝えればいいだけ……)
ひまりは、渡せない。
ひまりだけは、奪われたくない。
唯一、その気持ちだけ奮い立たせた。
白鳥を見送った後、
「家康。帰りは病院まで迎えに来てやってくれ」
「……わかった」
ひまりを迎えに行こうとしていた。
珍しく静かな道路で、突如近くでバイクの激しい排気音が鳴り響く。
走り去る、一台のバイク。
ひまりの背中。
その光景に暫く動けずにいた。