第147章 涙色の答案用紙(11)
新しいトリートメント。
新しいリップ。
お会計を済まして、店を出る。
「あ!後、ヘアピンも見に行っても良いかな?あれだったら、一人で……」
「付き合うに決まってんでしょ。良いのあったらお揃い買って、修学旅行付けようか!」
「うん!……でも天音ちゃんもそれなら一緒に。三つ同じのあると良いね」
「ひまり……言ったよね?無理しないでって」
「無理なんかしてないよ!」
ほら、早く雑貨屋さん行こう!
無理してるつもりなんてなかった。
天音ちゃんは、修学旅行で思い出作りたいって。きっと大きい手術前で不安だから。少しでも楽しんで欲しい。
大切な幼馴染。
でも……
私達の関係は
どんどん壊れていく。
三つ葉のヘアピンがあったワゴン前。
同じ学校の制服。
「四つ葉のヘアピン。可愛い……」
その声に足が止まる。
「……それ、一点物らしい」
そして今度は震えた。
「え……もしかして、徳川と天音ちゃん」
ゆっちゃんは声に出した途端、ハッとしたように慌てて口を塞ぐ。
(昨日も今日も……何で……)
こんな光景を見るんだろう。
二人が気付く前に、ゆっちゃんに帰ろうと言って体を反転させ、人混みに紛れる。
「ひまり!!」
「私なら大丈夫だよ。それより、お腹空かない?なんか、甘いもの食べたいなぁ〜」
もう泣かない。
泣かない。
「一回ちゃんと話をした方がいい!だって!徳川はっ……」
ブーッブーッ……
私は足を止めて、
鞄から携帯を取り出す。
『明日も迎えに行くからな。寝坊するなよ』
政宗からのメール。
私の明日は……
どんな日になるんだろう。