第25章 「苺のポッキー(7)政宗様編」政宗様side
「待たせて、ごめんね」
「今日は、家まで送ってやる」
「大丈夫だよ?駅から近いし」
「……頼まれたからな。家康に」
え?とひまりは俺を見る。
黙っていても良かったが、そうでも言わねぇと遠慮するだろうしな。
「そっか。家康が……」
ひまりが片足を軽く蹴り上げ俯くのを見て、悟る。
「何かあったのか?」
「う、ううん!何にもないよ!」
それより、政宗と二人で帰るの初めてじゃない?と笑って見せるひまり。
その笑みは薄っすら影り、普段鈴音のような声が何処か違う。
何か、無理してやがる。
「言われれば、確かにそうだな。家康がいつも居るしな」
「そうだね……」
そう呟いた後、ひまりは話題をすり替える。今朝渡した店の新作品。苺のクリーム大福。それを試食した感想を話し始めた。
見た目もほんのり
ピンクで可愛くて。
味も美味しかったし。
身振り手振りで説明する姿。
時折、ふわりと笑顔を俺に向け軽快な口調で話す。
(お前ぐらいだ。そんな嬉しそうに食った感想言う女は)
俺は自然と笑みが溢れる。
「一緒に食べた家康とも言ってたんだけど、中のクリームと苺の甘酸っぱい感じが!…絶妙……だねって」
「ん?どうした?」
突然足を止めて、口を閉ざすひまり。隣を歩いて居た俺も合わせるように足を止め、軽く屈んで顔を覗き込んでやると……
ぎこちなさそうに視線を逸らされた。
ギュッと桜色の唇を噛み、鞄を持つ手を微かに震わせひまりは再び歩き出す。
家康絡みだな、完全に。
気に入らねえ。
俺と二人の時に、この場に居ない奴の事なんか考えてる事がな。
「……こっち来い」
「へ?こっち?」
俺はひまりの細い手首を、荒い手つきで掴み……引っ張った。