第147章 涙色の答案用紙(11)
ぼーっとしている間に、すっかり先生に聞きそびれてしまった私は、ゆっちゃんと政宗に先に屋上に行って貰って、教室を出る。
職員室を目指して廊下を歩いていると、先生が普段あまり生徒が寄り付かない、渡り廊下の方角から歩いてくるのが見えた。
凄い険しい顔つきを見て、声を掛けるのに戸惑いながらも私は先生に近づく。
そして、天音ちゃんから伝言を聞いた事と昨日、先生を探していたことを話すと……
「……俺は、白鳥に放課後、貴様に校内を案内して貰えと言っただけだ。用などない」
え……。
先生の言葉に私は固まる。
(天音ちゃん。そんなこと一言も……)
思い出したくない昨日。
でも確かに……
ーーさっき先生から、ひまりちゃんに職員室に来るようにって。伝言頼まれて。
昨日と今日を聞き間違えたのかな?とは思ったけど……まさか内容が全然違うなんて。
(聞き間違いにしても流石に変…だよね…?)
暫く考え込んでいると、先生は前触れもなく私の髪を一房掴んだ。驚いて顔を上げれば、今度は親指で唇をスッと擦られ……
「せ、先生っ……」
突然過ぎて、
全く意図がつかめない先生の行動。
私は焦り声で先生を呼ぶと、
「……コレが原因か。俺の忠告を大人しく聞いておけば」
「忠告……?何の話ですか…?」
「ただの戯れごとだ。髪に付けていたのはどうした?」
先生は質問には答えず、ヘアピンがいつも付いていた場所を指でなぞると、不思議そうに眉を寄せた。
私は、自分の手でそこに触れ先生から目をそらす。