第146章 涙色の答案用紙(10)
門を閉めて、道路に出た時。
近づくバイク音。
青い空を見上げる間も無く……
それが誰かわかると私は邪魔にならないように、道の端っこに寄る。
そして目の前で青いバイクは止まった。黒いヘルメットで顔は見えなくても、政宗なのはすぐわかって……
「政宗……もしかして……」
迎えに来てくれたの?
「昨夜、お前。携帯の電源切ってたろ?ほら、乗れよ」
エンジンを一旦止めた後、政宗はヘルメットをポスッと私の頭に。
私はハッとして慌てて、バイク通学禁止じゃないの?と尋ねた。すると、政宗は織田先生には一応許可を貰ったから気にするなって、言って。
後の座席をポンポンと叩く。
暫く立ち尽くしていると、早く乗れと催促され……
「どうせ、一人で行くつもりだったんだろ?」
「う、ん。ありがと……でも…」
甘えてもいいのかな。
中途半端な返事しか出来なかった私。お店の仕込みや準備で朝は、特に忙しい筈なのに……。
独り言のように心に問いかけ、乗るのをいつまでも躊躇していると、
「お前は気にしすぎた。今は、自分のことだけ考えろ。いいな?」
「政宗……」
政宗は少しでも私が安心するように、被っていたヘルメットを取って、笑顔を見せてくれる。
つられて、やっと自然に笑顔が浮かびかけた時。
「天音ちゃん。行こうか」
「はい。お世話になります」
「家康。帰りは病院まで迎えに来てやってくれ」
「……わかった」
ドクンッ。
二件挟んだ先から微かに届いた声。
こんな時に限って、
ご近所はひっそりと静まり返り……
車が一台も通らない道路で……
良く響いた。
身体が勝手に反応して、首が動く。
おじさんの車に乗り込む、天音ちゃん。
そして家康の背中が視界に入る。
私は、鞄をしっかり脇で挟みバイクに跨った。
その後は、覚えていない。
気がつけば学校に着いていて……
教室の中にいた。