第146章 涙色の答案用紙(10)
文句も言えず、ぷぅとふくれっ面を浮かべた時。
「それと、まだ終わってない」
「え?だって、もう無いよ?」
その言葉に家康の方に体を戻して、床を見る。淡いグリーンのカーペットの上。どう見てもそこには、選ぶ貝は無い。
「数じゃなくて、大きさも勝負してるからまだひまりに勝ち目はある」
「え?大きさ??ハマグリの??」
「探してきたら?案外、近くにあるんじゃない?」
何故かぶっきらぼうに言われて……
立ち上がって、辺りを探す。
近く?
リビングだよね?
それほど広くない部屋。
隠してありそうな机の下、ソファの下を順番に覗き込む。
けど、見つからず……
(ん??お雛様とお内裏様の横に、何か置いてある……)
段飾りの一番上。
そこには美しく装飾された大きな貝が、お雛様とお内裏様の両端に一枚ずつ置かれていた。
「もしかして、コレ?」
「合わせてみれば?」
家康は私と目も合わさずただそう言って、貝を拾い後ろを通り過ぎてお母さんの所に運んでいく。
何だろう?
私はまず、ちょっと浮いているようなお雛様の方の貝を上に持ち上げる。
すると、
「え……リップ……」
その下に赤いリボンがかけられた、
ピンク色の箱。
私は目を開く。
発売日前からずっと欲しがってた物が、そこにあって……急いでお内裏様の方の貝も、持ち上げると……。