第146章 涙色の答案用紙(10)
今年の三月三日の夜___
「はい!」
私は百人一首みたいにして、貝に触れ手をあげる。
そして、二つの貝を表向けて確認。
「うぅ……違った…」
マークを見て、肩をガックリ下げながら念の為に貝を合わせてみるけど……
やっぱり違う。
はぁ。息を吐いてまた貝を並べる。
「もう、残り少ないけど?このままだと、景品なし決定」
向かえ合わせに座った家康の意地の悪い笑みに、私は次こそはと袖を腕捲りして気合いを入れる……のに。
どんどん家康は貝を合わせて、数を増やしていく。
「何でわかるの?」
まるで、貝の裏側が透けて見えるのかと思うぐらい。迷いもなくスイスイ貝を合わせる家康。
私の眉間にシワが寄る。
「大きさと模様。じっくり見たらわかる」
「ん〜見てるんだけど……」
コツンとそのシワを指で押され、負けないから!強気に言い返すけど、すっごい余裕な顔されて……悔しい。
相変わらず家康は、手加減一切なし。
誕生日ぐらい勝たしてくれたって良いのに。そんな気持ちが一瞬、頭に過ぎり……
けど、それはそれで嫌かな?
(真剣勝負なんだしね!よし!)
再度、
気合い入れを入れ直した結果……。
「誕生日ぐらい勝たしてくれたって、良いのに〜」
勝負が終わった後、つい出る本音。
床の上に並んだ貝はもう、一つも残ってない。半分どころか、それ以上の数の貝が家康の片膝立てた前にある。
くるっと背中を向けて膝を抱えると、
「あら?真剣に相手してくれる所が、家康君の優しさじゃない?」
「そうだけどぉ〜……」
洗い物をしていたお母さんがクスリと笑う。
そうそう。と後ろから家康の声。