第145章 涙色の答案用紙(9)天音ちゃんside
白い大きな大豪邸。
昔に一度だけ来たことがある。
中に入っておじ様と少し話をした後、客間を案内して貰う。
「家康は今、予備校でね。もしかしたら、ひまりちゃんいるかもしれないから呼んでこようか?」
「いえ。ひまりちゃんは、新学期に驚かせたいので……」
お世話になります。
私は頭を下げて、隣の部屋を見る。
(いっちゃん……どんな、男の子になって……)
淡い初恋。
(自分は、ひまりちゃんに酷いことを言っておいて……)
胸に感じる重い痛み。
決して、これは病気のせいじゃない。
だだの罪悪感。
あの日から一度も消えていない。
少ない荷物が入った鞄。
修学旅行明けには個室の病室が空きが出来るからと、退院予定の患者さんと入れ替わりまでの間。私はこの家でお世話になることに。
あまり通えない学校。
でも、おじ様は卒業された人のお古を貰ってきてくれて、ベットの横にあるハンガーラックに、戦国学園の制服がかけてあった。
荷物の整理や明日の学校の準備が終わった頃。トントンと扉の向こうから階段を登る足音が聞こえ……
カチャ……
私はそろっと、扉を開ける。
「あ。……どうも」
他人行儀に頭を下げるいっちゃんが、
そこに立っていた。
熱くなる目頭。
七年ぶりの再会。
でも、理由はそれだけじゃなかった。
「久しぶり。いっちゃん……」
面影は微かに残ってる。でも、明らかに素敵な男の子に成長していて……とても直視できなくて、私は俯く。
「何かあったら、言って。俺、今から用事あるから」
「うん。ありがとう……」
少しは期待した。
綺麗になったとは言って貰えなくても、七年ぶりだから色々話ぐらいは出来るかと思ったのに……
相変わらず、いっちゃんの目に私は映っていなかった。
あの時と同じように……
新学期、前日の夜。
七年ぶりに
ピンク色の封筒を……