第145章 涙色の答案用紙(9)天音ちゃんside
高校二年生の夏休み。
「手術が必要かと……」
私は、暫く動けなかった。
でも、両親が少しでも不安な気持ちが軽くなるようにと、いっちゃんの所の病院で手術が受けれるように話をしてくれた。
いっちゃんとひまりちゃんに会える。
素直に嬉しい私と。
また、あの二人を横から見なければいけない。
もう一人の私。
箱から取り出したタイムカプセル。
四つ葉の栞。
ピンク色の封筒。
その中にはプロフィール帳が二枚。
ひまりちゃんと、いっちゃんから届いた年賀状と手紙。最初の一年は返事を書いた。
二人から私宛に届く一枚。
一枚で二人宛に届ける。
それが辛くて自然と返事を書くのをやめ、自然と二人からもこなくなった。
いっちゃんに抱いていた淡い初恋。
ひまりちゃんに抱いていた友情。
大好きだった、二人が。
同じぐらい。
でも……
新学期、退院の日。
私は罪を犯した。
「大大大好きな幼馴染」
「大切な幼馴染」
二人にとって私は幼馴染。
友達でも女の子にも慣れない。
あの時、
もう一人の私が生まれた瞬間。
二人にいつか再会する日まで……
二人にも「幼馴染」のままでいて欲しいと……
願ってしまった。