第144章 涙色の答案用紙(8)※小学生時代
欠伸をしながら家康は私の隣にあるパイプ椅子に座ると、疲れた。と、ボソッと言って塾鞄を下ろす。
ボンッ!
(わぁ〜重たそう……)
夏期講習はきついって、勉強熱心な家康でも文句言ってた。……私は鞄の中に入っている、参考書や教科書、問題集を想像しただけで頭が痛くなった気がする。
「一度で良いから、家康の頭の中見てみたいなぁ。ぎゅうぎゅうに色んなものがつまってるのかな?」
「レントゲンで見れると、面白いね?」
天音ちゃんの意見にうんうん頷くと、家康は私達に呆れたような視線を向けて、
「見れるわけないし。まぁ、ひまりの頭は空っぽだろうけど」
「ひどいーっ!ちゃんと、つまってるもん!」
結局、嫌味は全部私に飛んできた。
「ふーん。なら、宿題ぐらい自分でしたら?」
「うっ……昨日のは、ちょっと難しくて。家康がもう宿題終わったって聞いたからで……でも!もう少し優しく教えて欲しかったもん!」
「……っべ!ムリ」
あっかんべーする家康。
「いじわるっ!」
口の両端を引っ張る私。
いつもお馴染みの光景。
そしてベット上で、天音ちゃんがクスリと笑うのもお決まり。
「はじまったね。二人の口喧嘩……ひまりちゃん、クッキー渡さなくていいの?」
「あ!そうだった!……」
「クッキーって……俺、甘いのいらな…」
「がんばって!作ってみたんだ!」
私は家康の胸に押し付けるようクッキーを渡す。そして、くるっと振り返って天音ちゃんと目を合わせ……
合図みたいに笑い合って、
「「唐辛子入り赤色クッキー!」」
声を揃えた。
それを聞いた家康。目をパチッと一度だけ瞬きして、袋に入ったクッキーを顔の高さまで持ち上げ……
「全然、赤くないけど?」
不思議そうな顔を浮かべる。
私達はクスクス笑いながら、
「普通に甘いし……」
文句言いながらでも完食した家康に、食べたんだからこれ書いてね?と、こじつけたみたいにプロフィール帳の用紙を二枚分渡した。