第144章 涙色の答案用紙(8)※小学生時代
私は扉を閉め、
「天音ちゃん!あのねプロフィール帳!買ってもらったよ!」
「プロフィール帳??」
頷きながら私は鞄の中から引っ張り出すと、ベットの横にあるパイプ椅子に座る。
そして取り出したのは、昨日お母さんに買って貰った、ハート柄のプロフィール帳!それを顔の横で持って、私はウキウキしながら話をした。
「あのね!年賀状書いたりする時に、便利だから学校で今、流行ってて!高学年の間では、卒業の想い出になるからって交換し合ったりしてるみたい!」
「……そっか。でも私。学校行ってないから。必要ないかな」
スラリと伸びた長い睫毛。
それが悲しそうに揺れるのを見て、私は慌ててこれを持って来た理由を説明する。
「私、天音ちゃんに書いてきたんだよ!!」
「私に?」
人差し指で自分を指す天音ちゃんに、笑いながらコクコクと頷く。
「うん!引っ越してもお手紙とかのやり取りが、出来たら嬉しいなって思って!」
私は昨夜書いた自分のプロフィール帳と、もう一枚空白のも一緒に渡した。そして、それを天音ちゃんに書いて欲しいとお願いをする。
ジッーと静かにその二枚を見比べる天音ちゃん。もしかして、迷惑だったかな?と思った時。
プッ。吹き出し笑いが聞こえて、私は首を傾ける。
「もしかして、私!変なこと書いてたかなっ?」
「ううん。貴方にとって私は?の項目に、大大大好きな幼馴染って書いてあるから、嬉しくて」
ひまりちゃんは、本当に真っ直ぐだね。天音ちゃんにそう言われて、私は少し照れながら笑う。
「この項目。いっちゃんなら、私達に何て書くと思う?」
「う〜ん。そもそも書いてくれるかな?面倒臭い。とか!言われそう」
「口真似、似てるね?」
「ふふっ。ありがとう!幼馴染歴は長いからね!」
調子に乗った私。
家康のモノマネを次々始めると、天音ちゃんは珍しく、声をあげて笑ってくれて私はそれが嬉しくて堪らなかった。