第144章 涙色の答案用紙(8)※小学生時代
(小学生時代)
暑い日差しが続いた夏休み真ん中。
私は、幼馴染である家康のお父さんが働いている?お医者さんをしてる?大きな病院の前で一人、バスから降りる。
鞄に色んなものを詰め込んで、あと!ちゃんと宿題も入れて、早歩きである病室に向かう。
もちろん!
理由は、新学期に退院と引越しが決まった天音ちゃんと、残り少ない想い出作りをするため。
家康は塾で忙しくてなかなか一緒に来れなかったけど、私は一人でも時間さえあれば、お見舞いによく来ていた。
(今日は夕方までたっぷり時間あるから〜いっぱいお話出来るといいなぁ!)
白いツルツルの床。
車椅子の人や、松葉杖をついている人達にぶつからないように、気をつけて歩く。
白鳥天音ちゃん。優しくて、金色の髪が綺麗で。苗字の通り肌も白くて白鳥みたいなキリッとした瞳をもつ同い年の女の子。
小学校に入学してすぐに心臓に重い病気が見つかって……入院したばっかりの頃はご飯も全然食べれないぐらい、元気がなかったって、後からおじさんに聞いた。
だから、少しでも入院生活が笑顔で過ごせるように。小学校は別でも、年が同じなら話が合うからって!それが私達が仲良くなったきっかけ。
(確か、今日は昼からクッキー作りが出来るからっておじさん言ってたよね!)
エプロンもちゃんと持って来たから、大丈夫!
私はその場でスキップしたくなるのを我慢して……ある病室の前で立ち止まる。
『707号室』
扉の隣にある小さなプレート。
私は扉に手をかけ……
「失礼しまーす……」
クーラーがよく効いた静かな個室病室。なるべく音を立てないようにして、中を覗き込む。
すると、
「あ……!ひまりちゃん」
ベットの上で読書をしていた天音ちゃんは、私に気づいて本を閉じと優しく微笑んでくれた。