第143章 涙色のの答案用紙(7)
ザァァァッ………。
激しさを増した雨。
暗闇に一つの傘。
「ほら、天音ちゃんが風邪引いたら、大変だわ」
それに気づいた母親は、家康に早く戻るように肩をそっと押して中に戻る。
「いっちゃん。おばさんがご飯だから戻るように……って」
雨……。
家康の制服はずぶ濡れになる。
手に握りしめていた手紙。
真っ白だった封筒。
雨を吸い込み……
灰色に染まる。
「……な、んで。ひまりに」
クシャ。
グシャ。
(違う。俺が……直接渡せば……)
ギリっと歯を食いしばり、
言葉を呑み込む。
あの時……。
戻せない時間。
そして、今日は……。
戻らない時間。
家康の頬を伝うのは……
涙色か、透明か、灰色か……。
ひまりは曇った窓を手で拭き……
(家康……天音ちゃん……)
二人の姿を見下ろす。
そして、カーテンを閉めて。
オルゴールと手紙をあの箱に仕舞おうと、クローゼットから取り出した。
タイムカプセル。
そして
プロフィール帳に閉じれなかった……
一枚。
『徳川家康』
七年ぶりに
黄色の封筒から……。