第143章 涙色のの答案用紙(7)
枯れない涙。
雨はいつか止む。
私の甘くもない、ただ温くて塩っぱいだけのコレは……いつ止むのかな。
部屋の中に飛び込んで。
ガチャッ……!
鍵をかけた。
鞄がズルズル肩から落ちて、私は凄い勢いで中から手紙を取り出す。ぐしゃぐしゃになって、いっぱい涙を吸い込んだ手紙……。
答案用紙のlove letter。
それを、グシャって握って立ち上がる。
震える腕をゴミ箱に向かって、振り下ろそうとした時。
……♪♩♩……♫…
弱々しく。
突然鳴り出したオルゴール。
私は机の上に丸まった手紙を伸ばし、四角い手のひらサイズの箱を乗せる。
ピンク色の木箱オルゴール。
ネジを巻いて。
耳を済ます。
ーーオルゴールの音色で聴くと、全然違う曲に聴こえるから不思議……。
ーー……確かに。
家康の香りがあの時、広がって。
「……ぁ…あっ……くっ…」
ーーねぇ!これ凄い!この曲とこの曲を同時に鳴らすと、違う音色が生まれるんだって!
ーーふーん。なら、コレにしとく?俺たちの答え合わせみたいで、面白いかも。
二つの音が一つにもなる音色を、私達は選んだ。
「くっ……な、んでこの曲にしちゃっ…」
ーー今を大事にしなさい。
「今」
私達の「今」は……。
いつだった?
くまたんを抱きしめながらベットに顔を埋める。
コンコン……。
「……ひまり。家康君。ずっと待ってくれてるわよ。外で雨降りそうだし行ってあげたら……」
私達の様子を見て、お母さんも察してくれてるのか、控えめな話し方。
ご飯は?
お腹空いてないから…
私は、ただ一言だけ。
扉の前からお母さんの気配が消える。
それと同時に
ポツリ、ポツリ……
窓を叩く音。
その正体が雨だとわかった時には、
けたたましく激しさを増していた。