第143章 涙色のの答案用紙(7)
夕焼け色に染まった公園。
止まらない涙。
政宗の広い胸の中で、泣きじゃくった。
家康の気持ちとか、
天音ちゃんの気持ちとか。
何にも考えれなくて。
今は、自分の気持ちだけで精一杯だった。
声を抑えようと思って唇を噛んでも、
隙間から零れだす。
「ひっ、く……っ、ごめ、んね」
完全に八つ当たり。政宗の胸を叩いていた手を止める。酷いことを。何をどうしたいのか、どうしたら良いのかわからなくて。政宗に甘えてしまった。
(政宗は何にも悪くないのに……)
「謝るな。俺が家康を忘れさせてやる」
なのに、優しくしてくれる。
いつもそこに。
当たり前みたいに。
夏休み中、ずっとそこにあったヘアピン。
今は、壊れて無くなっていて。
政宗の手がゆっくりと、
左耳上の髪に触れる。
家康がいつも側に居てくれたみたいに。
それが、当たり前だった日常。
夏休み、沢山思い出を作ったのに……
今は、もう隣にいなくて。
(忘れさせて……?)
え………。
私は、顔を上げる。
驚きとかそれ以上の感情が、
胸をえぐるように渦巻いて。
また、真っ白に。
(わす……れ、るの?私は……?)
忘れたいの?
忘れるの?
忘れれるの?
忘れないといけないの?
忘れたらラクになれる?
何を忘れたらいいの?
タイムカプセルに仕舞うじゃなくて…
今度はこの「恋」を完全に消さないといけないの?
「もう我慢はしねえ」
政宗の真剣な顔。
ゆっくり近づいてくるのが見えて……
「お前が好きだ」
止まらない涙。
それが頬を伝い一気に滑り落ちる。