第142章 涙色の答案用紙(6)※政宗様side
やっと公園入り口でトボトボ歩き震える華奢な肩を見つけ、俺は呼吸を整える間も無く……背後から捕まえる。
ビクッと肩を鳴らし、
ゆっくり振り返るひまり。
「っひっく……」
俺を見上げた痛々しい顔。
(この世の終わりみたいな顔だな)
強引に扱かえるわけがねえ。
俺は壊れ物を扱うかのようにひまりの肩を抱き、泣き顔を隠しながら公園の中に入ると……
呼吸を乱して、頭の整理がまだ追いついていないひまりを、正面から抱き寄せた。
一人で泣くなって……
「言っただろ?」
意識しなくても、自然と俺の表情は柔らかさを増す。笑わせてやりたい。目の前で泣き腫らした顔に、光りを戻してやりたい。
「ま、さむね……どう、して…」
「理由なんているのか?そんなの、お前が泣いてるからに決まってるだろ?」
「そ、っか。……ま、さむねは家康のす、きな子知って、たから。……だからっ!私が泣くの、しって……っ!あっ……あぁぁっ…!!」
ひまりは糸が切れたように泣き声を上げ、俺の胸に苛立ち、怒り、不安、恐怖、絶望……普段なら絶対見せないような感情をぶつけ出す。
何を勘違いしてるのかは、わからないが。それでも、好きにさせてやりたかった。
目から雨より酷い大粒の涙。
焦点が合ってない瞳からとめどなく降り続き……
「な、んで!なんでっ!私に、も……っキスし、たのに……っ!あぁ、っ
……くっ…ぁぁっ」
俺はひまりが落ち着くまで、
「も、しかしたら……一緒だって……き、たいして……な、のに間違いだった……」
(壊れかかってんじゃねえか)
ひたすら、待った。
そんな殊勝な感情がこの俺にもあったとは……。
自分の行動に、自分が一番驚くとは思わなかった。
夕暮れ時の静かな公園。
気を利かして周りの奴らが消えたのか、
最初から誰も居なかったのか……
知らねえが。
俺の背中に腕を回して泣きじゃくる……
「い、えやす……っ」
姫だけは、失いたくない。
絶対にな。