第142章 涙色の答案用紙(6)※政宗様side
ガラガラッ……
教室の扉が全部開く前に。
「……っ、く……」
腕で顔を半分隠したひまりが飛び込んできやがって。
「あ!待ってた……よ……どうしたのひまり!……ひまり!!」
報告を待っていた、一番仲の良い小春川の声さえ振り切り、
「おい!……くそっ!ひまり!」
ひまりは無言で自分の鞄だけを掴むと、あっという間に走り去った。……一瞬、微かに見えた泣き顔。あの尋常じゃない様子。
何かあったのだけは間違いねえ。
俺は、急いで自分の鞄を掴む。
「家康に言っとけ」
ひまりは、俺が貰う。ってな。
小春川に伝言を言い残し、急いで追いかける。
「そんな事、言えないし……。バカ」
走り出した俺。その声は背後から吹き込んだ風音より、ちっこくて。届くことはなかった。
廊下に出た瞬間。
ドンッ!!
「わ!ま、政宗先輩!」
三成にぶつかり大量の本が床に散らばる。こんな時に。そう思いながら、尻餅をついた三成に手を貸して、体を起こす。
「悪い。飛び出したのは俺だからな」
「いえ、ありがとうございます。それよりも、何かあったのですか?先ほど、ひまり先輩も下駄箱で……あ、もう行ってしまいましたね」
三成の話の途中で、俺は走り出す。
厄介なのは、女の癖にひまりは足が速い。急がねえと見失う。
俺は校門を出て、左右に首を振る。
案の定、もう姿は消えていた。多分、携帯にかけても今は無理だ。出るわけがない。
行きそうな所。
あの状態で、真っ直ぐ家に帰るとも考えにくい。
俺は、寄り道によく使う公園に全力で向かった。