第142章 涙色の答案用紙(6)※政宗様side
窓に寄りかかる。
生徒の影一つない校庭。
それに見飽きた俺は身体を反転させ、
ポケットに手を突っ込む。
(今頃、あいつらは……)
何気に閉じた瞼の裏。
石碑で寄り添う、家康とひまりが俺の意思と関係なく浮かんできやがる。余裕ぶって見えるらしいが、気が気じゃねえ。いつかひまりは泣くなんてな……そんなのは、俺の勝手な願望に近い。
ただ、想いが強い分。
崩れた時は呆気ない。
いつまでも焦れったい二人を……
俺は見てきた。
ひまりを……
真っ直ぐに見る家康。
本人、自覚はしてないだろうが…
ひまりも、気づけば家康様を目で追っていた。
俺はそんな二人を隣で見てきた。
一番近くで……な。
(まぁ…多少なりとあの手紙も関係して…)
「政宗。あんた、結局何がしたかったわけ?」
小春川は窓の手摺を両手で掴み、足をトントン壁に突きながら聞いてくる。俺は、意味を理解しながら何がだ?すっとぼけた返事を返す。
そう言えば、こいつ。
合宿の時に忠告してきたな。
(何がしたいかなんざ、自分でもわからねえよ)
ひまりの笑顔を守りたいだけ。
泣かせたくないだけだ。
それ以上も以下でもない。
(俺が欲しいのは……)
ーー政宗!
ひまりの笑顔だ。
暫く沈黙が流れ。
「ひまりのこと、好きなんでしょ?」
小春川は珍しくしおらしい声を出して、俺を見る。
何だ?
俺に気なんて無いだろう?
そう思った時だ。