第141章 涙色の答案用紙(5)※家康様side
捕まえても。
捕まえれきれなくて。
あと、一歩で離れていく。
「は、なして……っ!!」
何をした。
何を今までしていた。
何の為に時間をかけたんだ。
「今のは…っ、間違いで…!」
うるさい。
うるさい。
言い訳なんかするな。
「間違いなのは……っ、ま、違ってるのは……っ…」
泣き溢れる涙色。
どうしても、欲しかった……
ひまりだけは。
「答えが違うのは……」
思いっきり、引っ叩かれても良い。
思いっきり、泣かれても良い。
思いっきり、叫ばれても良い。
俺の腕の中なら。
「私の答案用紙……でしょ?」
なのに……
ひまりは、笑った。
見たことない悲しい花。
パッと咲いて儚く消えた瞬間。
「はっ…はっ……い、っちゃん……」
何かが、壊れた。その衝撃が耐えれず完全に力が抜け落ちる。白鳥がひまりを掴んでいない方の俺の腕を、掴んでいるのにも気付かないぐらい。
俺は……
自分の中の全てを失った。
それでも、
心だけは、声だけは叫ぶ。
「ひまり!!!」
すり抜けた腕。
俺の利き手からぬくもりが消えた。
苦しそうに胸を押さえる白鳥。
「な、んで。あそこに…何で走って…っ」
「だ、ってファーストキスだ、ったんだよ。はぁ…はぁ…置いてか、ないで…」
俺の真っ直ぐに向いてた想いは……
行方を失い、見失う。
「小春川!!…はぁっ…ひまりは!」
「……もう、遅いよ。政宗が今頃……」
捕まえてる頃。
体調を取り戻した白鳥。俺は明智先生に、家まで送り届けて貰えないかと頼み込んだ。