第140章 涙色の答案用紙(4)
聞きたくない。
聞きたくない。
何にも、聞きたくない。
「は、なして……っ!!」
何で。
何で。
何で、追いかけてくるの。
「今のは…っ、間違いで…!」
わかんない。
わかんない。
もう、わかんないよ。
「間違いなのは……っ、ま、違ってるのは……っ…」
上手くできない呼吸。
それでも、無理やり吸い込んで……
静かに絞り出した。
答えが違うのは……
「私の答案用紙……でしょ?」
『貴方が好き』
パッと何かが消えた瞬間。
「はっ…はっ……い、っちゃん……」
胸を押さえ、呼吸を乱して、蒼い顔を浮かべた天音ちゃんが、苦しげに家康の腕を掴んだ。
そして……
私を掴んでいた腕が緩む。
そうだよ。
まるで、そう言われているみたいで。
「ひまり!!!」
もう、壊れそうな心は。
何にも考えれなくなっていた。
飛び込むように教室に入って、
「あ!待ってた……よ……どうしたのひまり!……ひまり!!」
「おい!……くそっ!ひまり!」
鞄だけ掴んで、また走る。
階段も後から思えば、
よく転ばなかったのが不思議なぐらい。
止まることなく、走って。
涙も止まらなくて。
気づいたら、
「一人で泣くなって……」
言っただろ?
政宗の腕の中に居た。