第140章 涙色の答案用紙(4)
ただ、それだけ。
ただ、その想い一つだけを込めた。
私は裏庭に踏み入る。
握りしめた答案用紙。
生まれて初めて書いた……
『答案用紙…love letter』
懐かしい雰囲気。
どうしても石碑に来るとそんな不思議な、気分になる。
風がそよそよと吹いて……
火照った肌には、心地よくて。
甘い花の香りを、運んで来てくれる。
私の髪から?
それとも、
石碑の周りを取り囲む花から?
それとも、それとも……
動いてた足……
急に石になったみたいに……
固まったみたいに……
ピタッと止まる。
(……あ、れ?)
何で……?
夢でも見てる…のかな…。
時も一緒に止まったみたいに。
シーンとして。
ドキドキしてた胸。
壊れたみたいに、
突然鼓動を打たなくなって……
風に靡く金色の髪。
それに向かって……
家康の……腕が……伸び…る。
キラキラして、眩しくて。
二人とも同じ髪色を揺らして……。
石碑の前で……
一つに重なった。
ジャリ……。
フラつきかける脚。
学園の敷地にある
石碑の前で
想いを通わせた
二人は
「永遠の愛を手に入れる」
但し、叶えられるのは……
(な、んだっ…け?確か運命が…なんとか…でっ…)
まだ、頭の中には何も運ばれてないのに。真っ白になったからかな……?
そんなジンクスだけ浮かんで。
(先に…見てしまった…から…かな……っ?)
まだ、何一つ心が追いつかないまま。
視界が下の方からゆっくり……
ぼやけて、霞んで、滲んで……
みるみる溜まって……
(な…にしにき、たん…だっけ…?)
手に握りしめた手紙。
しわくちゃになるぐらい、震えて。
私から溢れたモノを……
ポタッ……
ポタッ……
(……こ、き…ゅうが…な、に…これ)
スッと溶け込んで……
水玉模様みたいに……吸い込んでいく。
二人の唇が離れた瞬間…____
ジャリ………ッ……。
私もその場から離れる。