第23章 「苺のポッキー(5)家康様編」混合side
ガタッ!
突然、椅子から立ち上がった家康。
思わず、私は……
___顔を上げてしまった。
「んっ……!!」
顔から火が出るぐらい、
恥ずかしいのに……
私の知らない家康の気持ちを、
少しでも知りたくて頑張って
食べた7割のポッキー。
(ヒントだけでも欲しかった)
好きな子がいるのに、
何で、こんな勘違いされるような意地悪するの?
幼馴染なのに、
何で、もっと話してくれないの?
その気持ちだけを突き動かして、食べたのに……
(なのに何で……)
嘘つき。
家康は食べないって、約束したのに。
口の中に残ったポッキー。
苺の香りが溢れ、
甘さを増して……
「んんっ……ぁ」
溶けながら少しずつ、消えていく。
椅子に座ったまま、崩れ落ちそうになる身体。そんな私を後頭部を掴んだ手が、支えて……
やっと、私の思考と身体が追いつき動き出す。
抵抗しなきゃ。
そう思って、
家康の胸を叩こうとした時、
「………コレが、ヒント」
口の中から完全に、ポッキーが無くなった。
長いようで短い時間。
私は唇が離れるのと同時に、
「な……んで……」
口元を覆う。
頭の中が、グッと気温が下がったように冷たい。
でも、触れられた部分と
胸は火傷したように熱くて……
心と頭が混乱する。
そんな中、家康と交わった視線。
熱を含んだような翡翠の瞳に、
私は視線を離せなくて……
「俺だけ見てたら、すぐ解るから」
幼馴染じゃなくて、
一人の男として。
家康は呆然とする私の、
耳に唇を寄せ……
「余所見なんか、絶対させないから」
そう、チョコなんかより。
ずっとずっと甘い声で囁いた。
椅子を引いて机の上の日記を掴む。
そして鞄の存在なんか忘れて、教室から飛び出した。
放課後の静けさの中。
廊下に響く足音。
(何で………っ)
好きな子いるって、言ってたのに。
理由もよく解らない
キスなんか……。
しかもあんな……
食べられてるみたいなキス……。
(それなのに何で……)
私は嫌じゃ……
なかったの?
口の中に微かに残った、
チョコの甘さ。
でも心はもどかしくて……。
___甘酸っぱい。