第139章 涙色の答案用紙(3)※家康様side
頭の中、四六時中。
ずっとひまりがいた。
笑うとこ。
泣くとこ。
怒るとこ。
拗ねるとこ。
真っ直ぐで、
ひたすらバカみたいに素直だから。
そこが可愛くて、守ってあげたくて。
一生懸命で。
無意識で無自覚な癖に、俺の全部。
視線、心、肌、時間。
平気で奪ってく。
(触りたくて、欲しくて堪んない)
だから、
俺はいつも、矢を真っ直ぐに放った。
でないと、届かないから。
ひまり以外、見る気も、興味も一切ない。
これからも。
性格は捻くれて、天邪鬼。
でも唯一、ひまりへの想いだけは曲がらなかった。
早くあの甘ったるい声が聞きたい。
早くあの肌に触れたい。
早くひまりの心が、欲しい。
(ほんと、やばい……)
冷静になれるわけがない。
完全に浮かれてる。
風が届く。
小さな足音。
閉じた瞼。
一気に、光が中に届く。
見なくても、俺はいつも……
ひまりだけは、見えた。
あの春みたいに、俺は腕を伸ばす。
顔にかかる髪。
甘い花の香り。
広がって、俺の胸を焦がす。
「ひまり」
ワサビと間違えたって、
また怒られないように……
だからあえて名前を呼んで……
あの時みたいに泣かせない。
(もう、二度と泣かせたくない)
感覚だけを頼りに……
唇を寄せた。