第139章 涙色の答案用紙(3)※家康様side
ーーねぇ、怒られない?
ーー見つからなければ、大丈夫。
ひまりにこの本を渡された時。俺は……必死に栞が挟んであった、このページだけを覚えた。そして、ちょうど読めるようになったある日の休日。この学園の近くに母さん達に連れられ、一緒に買い物に来ていた俺たちは……
こっそり、二人で抜け出して。
こっそり、二人で忍び込んだ。
むかしむかし、
ある戦国武将と姫君は恋に落ちました。
綺麗な花が咲いたある日……
想いを通わせた二人。
如何なる時も、力を合わせ……
争いの絶えない、戦国時代を乗り越えていきます。
そして、
石碑の前で、永遠の愛を誓いました。
巡り逢う……運命の愛を……。
ただ、純粋に。
ただ、物語をひまりに読み聞かせた。
ーーその場所がここ?
ーー多分。……手出して。
ひまりが良く花冠を作っているのを真似て、俺は近くにあった白詰草を摘んで……指輪を作り、ひまりの指にはめた。
ーー言い伝えごっこ。
ーーゆびわ?……ありがとう!
ひまりの表情に、
名前も知らない
綺麗で可愛い花が咲いて。
眩しくて。
落ち着かなくなって
真っ直ぐ見れなくて。
俯いた先に見えた、三つ葉。
何気なく手にとって、
白詰草で作った指輪の横に添えた。
それが初恋だと知ったのは、もう少し成長した後。
ひまりが好きだと自覚した俺は、気づいたら意地悪ばっかして、捻くれだしたっけ?
俺ばっかり振り回されるのが、嫌で。
片腕を動かす。
ポケットの中に、
オルゴールが入ってるのを確認。
ーーなんでチューするの?
ーー俺のお姫様だから。
ーーいっちゃんの、お嫁さんになるの?
ーーいつか、ここでね。
ーーうん!約束ね!
運命、巡り合い。
そんなモノを知る前に……
俺はひまりに恋をした。
だから、関係ない。
言い伝えも、
誰かが創り上げたジンクスも。
そんなの一切なしで……
俺だけのお姫様になって、欲しかった。
ただ、それだけ。
ただ、本当にそれだけだった。