第139章 涙色の答案用紙(3)※家康様side
「……そうだね。ねぇ。石碑は何処にあるの?」
石碑の話したっけ?記憶ないんだけど。俺がそう聞き返すと、白鳥は睫毛を揺らしスッと視線を足元に落とす。
「プロフィール帳に書いてあったから。思い出の場所は、戦国学園の石碑……って」
「プロフィール帳?……あぁ。昔、ひまりと一緒にせがんできたヤツ?」
七年も前。
正直、何書いたか覚えてない。確か、一時期女子の間で流行ってるからって。ひまりが雑貨屋でハート柄の買ってきて、二枚分渡されたことは覚えてる。
一枚は白鳥に。
もう一枚はひまりに……
(……ん?でも確か書いた内容は、ちょっと変えたような)
石碑のことを書いたのは、ひまりの方だった記憶が微かにある。内容が微妙に違って、間違えないように白鳥には黄色の封筒。ひまりにはピンク色の封筒に入れて……
そこまで考えてやめる。
今更、そんな昔の話を追求しても時間の無駄だと判断。一刻も早く、ひまりに会いたい。
「石碑は校舎裏を回った裏庭にあるけど?普段は、誰も近寄らないし。石碑以外、何にもない」
「静かな場所なら、また行ってみたい」
白鳥はそう言って、俺の持っている本を見る。てっきりまた、その本は?とか、聞かれるかと思ったが本には興味ないのか、そこには触れてこなかった。
俺は壁掛け時計の時刻を見て、明智先生にお願いしますと頭を下げ、保健室を出る。短い滞在時間でも、薬品の匂いが染み付いたカッターシャツ。
(ひまりの香り、存分に楽しませて貰わないと)
春……。
あの時は怒られて、平手打ち飛んできたけど。
今日は思う存分……
ーーファーストキスなのに!!ワサビと間違えるなんて!
ーーファーストキスって……昔、したし。
ーー小さい頃のは、ノーカウントなの!!
あの時は、突っ込まなかったけど。
多分、忘れてる。
二人で忍び込んで、この本読んで……
石碑の前で、
ファーストキスしたの。
だから
思い出すまで、絶対やめてあげない。
覚悟しなよ。