第138章 涙色の答案用紙(2)
ゆっちゃんは私達のやりとりを見て、ニタニタ笑いながらトリトーメントを鞄の中に戻す。そして立ち上がり私の肩をぽんぽんと叩くと、
「天音ちゃん!修学旅行の話、ちょっとしようと思うから、こっち来て!」
「……はい」
ゆっちゃんは邪魔者は退散するね、と耳打ちして天音ちゃんと共に政宗の席に移動していく。
(もう〜変に気をまわされると、余計に意識しちゃうよ……)
私はその場に立ち上がり、チラッと家康を見る。ソワソワして落ち着かなくて、手をもじもじ動かしていると、
「白鳥には、保健室で待ってるように言ってあるから。荷物は教室に置いてく」
三人で帰ろう。
そう言われて、私はコクっと頷く。
なら、職員室から直接向かうね!と、伝えると視界に家康の手が伸びてくるのが見えて……
思わず、
俯いてぎゅっと目を閉じる。
「先に行って、待ってる」
三つ葉のヘアピンに、ぬくもり。
スラリと伸びた指がスルスルと私の髪を伝い、絡めながら胸元まで降りてくるのが感触でわかって……
そっと、瞼を持ち上げると家康と目が合う。
(どうしよう……凄い緊張してきた…)
そう思った瞬間、くしゃと一房髪を掴まれ家康は自分の顔に近づける。
甘い花の香り。
ポツリとそう呟く声が聞こえて、思わず恥ずかしくなって……
少し俯くと、
「すぐに行くから。……待ってて」
私は顔を上げて笑う。
ハラリと解けていく髪……
教室の窓から吹き込んだ風と、
家康の優しい笑顔に……
私の心に花火が
パッと熱く咲いた。