第134章 夏の大三角〜あとがき〜
外のご飯。
山の峠は涼しくて、
春のピクニック気分。
政宗から夏場の店の繁盛ぶりを聞きながら、私も北海道での出来事を色々話した。
「オルゴール作り体験したんだけどね!すっごい難しくて!でも、家康は手先器用だから、職人さんになれるよって褒められてて!ぱくっ…んぐっ」
「まぁ。普段から何かと器用だからあいつは。唯一、不器用なのは恋愛ぐらいじゃねえか?」
んっ!?///
思わず喉におにぎりが詰まる。
私が慌てて胸元を叩くと、政宗は素早くお茶を渡してくれて……
ゴクゴクッ!
一気に流し込んで私はホッと息をつくと、チロっと視線を向ける。
「……政宗、確か知ってるんだよね?家康の好きな人」
「….…まぁな」
「何で不器用なの?」
つい聞いてしまう。
今は、家康のことが好きだって自覚したから。もっと知りたくて……
「……教えて欲しいのか?」
「だ、だめなら良いの!もうすぐ……色々教えて貰えそう…だ、し…///」
花火の時にキスして。
一番のヒントを貰った私は、完全にそのつもりでいて。熱くなった頬に手を添えながら立ち上がる。
気にしないで!
そう言おうと思って、政宗の方を見ようと身体を動かした時。
視界は、黒一色になって……
その正体が、政宗が着ていたジャンバーだってわかるのと同時に……
ふわりと足が傾く。
「……一人で泣くなよ。辛い時は必ず、俺の所に来い」
身体にぬくもりが広がって……
「守ってやる。お前の笑顔を……」
痛いぐらい苦しくて
強引で凄い力。
「ま、…さむね?一体、な、んの話を…」
でも、優しい。
何もかもを包み込んでくれるような…
抱き締め方だった。
泣く?
辛い?
想いが強ければ強いほど……
伝える前にすれ違った時。
一瞬でそれは壊れていく……。
ーー時を逃したり、機会を見過ごせば……同じ想いでも届かなくなる時が……届けたくても、届けれない時がくるかもしれないからね。
今を大事にしなさい。
ひまりの脳裏に浮かんだ、あの言葉はまるで花火のように……
パッと咲き……
パッと消えた。