第133章 夏の大三角〜最終章〜(5)
すぐ
離れて……
再び、花火が上がる。
そして、
(好きだよ……)
(好きだ……)
迷わず、もう一度……
まだ渡せない
答えを確かめ合った。
夜空に広がる
向日葵の大輪。
それが夜空に煌めいた後……
時間をかけて
静かに消えた。
そして
夏の大三角が、浮かんだ星空の下。
「家康……」
「ひまり……」
二人は気恥ずかしそうに、
横に視線を逸らす。
そして暫くすると、
見つめ合い……
また、寄り添い……
夜空を見上げた。
その頃。
家康とひまりの母親は、花火の音につられホテルのデッキに出ていた。
「家康〜ちゃんと、頑張ってるかしら?」
「手こずってないと良いけどね。何ていってもひまりは、自分の気持すら鈍いからね」
「ふふっ!初恋はよく実らないって言うけど、初恋同士なんだから実って貰わないと〜」
うちのお嫁さんはひまりちゃん、って決めてるから。家康の母親は、少女のようにウィンクをして笑う。
「でも、ずっと不思議なのよね……。小学校の時、あの子。確かに家康くんに恋してたんだけど、いつの間にかまた幼馴染に戻ってて……」
ひまりの母親は、未だにそれが謎めいていた。
そして、その隣の部屋で。
「姫宮さん。ちょっと飲みすぎじゃないですか?」
「家康くーん。ひまりを、だぁいじにしてやってくれぇ〜」
ひまりの父親は畳の上でグッタリと倒れ、ヘロヘロに酔っ払いにもう既に嫁にやる想像をして、情けなく涙を浮かべる。
家康の父親は苦笑いをして、胃薬を鞄の中から出すと水を取りに向かう。
すると、家康の荷物の上にオルゴールが乗っているのに気づき……
何気なく蓋を開けた。
(三つ葉の指輪?)
そして、オルゴールの裏をふと見ると。
「なかなか、我が息子ながら粋なことするじゃないか」
そこに手彫りで刻まれた、お姫様の名前を見て……微笑み、指輪を中に戻すと蓋を閉じた。