第133章 夏の大三角〜最終章〜(5)
ドォーンッ……。
肩に回した右手。
グイッと引き寄せて、
同時に体を横に向ける。
俺は利き手の左手も使い、
ひまりを正面から抱き締める。
(……あそこで言いたいから)
その為に、こっそりオルゴールの中に仕込んだ。ちゃんとしたの、渡したくて。
「新学期。……石碑で答え合わせしよう」
原点だし、あそこが。俺たちの。
そんな事、すっかり忘れているひまりはただ大人しく俺に抱かれ、顔を上げる。
「だ、だって……その……」
歯切れ悪そうに言葉を濁して、それでも真っ直ぐ俺の方を見て、瞳に不安な色を宿す。
(どうせまた、一人であれこれ考えて混乱してるんだろうけど)
もう、すっかり花火なんか忘れて。
俺たちは、お互いの瞳に映る光を静かに見つめ合う。
「なら、手紙で書いてきても良い?答案用紙みたいにして渡すから……」
「……わかった。なら、俺も書いてくる」
「え??私の宿題の答えを??」
ちょっと違うけど、まぁ。
そうゆうことに、なるのかも。
俺は無言で微笑。
どこまで、わかってんのか。
俺の気持ちどこまで届いてるのか。
微妙な感じだけど……
三つ葉のヘアピン。
その存在を確かめるように動く指。
俺は短い息を吐き出して、
その指に自分の指を絡ませる。
するとひまりはピクンと反応して、
ゆっくりと指を絡ませたまま、膝の上まで滑らす。
「そんなに不安なら……一番のヒントあげる」
だから、もう黙って。
ヒューッ……
ドンドンドンッ…!
ドォーンッ!
次々と絶えること無く花火が上がり、
周りから一際大きな歓声。
クライマックスの中、
俺とひまりは目を閉じて……
一瞬だけ、シンと静まり返った時……
ゆっくり
重なる唇。