第133章 夏の大三角〜最終章〜(5)
夜空に弾けた花びら……。
色彩の光が手を伸ばせば、
届く気がして……。
肩に回された手。
ねぇ。勘違いじゃないよね?
花火見てるフリして、そっぽを向いてるわけじゃないよね?
顔が赤いのも、
花火のせいじゃないよね?
(ドキドキする……でも、もっと…)
側にいたい。
私は、そっと家康の肩に頭を預ける。
心臓の音。
もしかしたら、花火より凄いかもしれない。
壊れてるみたいに動いて。
締め付けられたみたいに苦しくて。
火傷しそうなぐらい熱くて。
でも、あったかい。
(……新学期まで、残り一週間)
ーー何で、その答えを徳川くんが知ってるか。今度はよく、考えてみたら?
家康が私に出した宿題の答えを、
知ってるってことは……
つまり、私が家康を好きになることを
知っていたってこと?
私がタイムカプセルに
気持ちをしまってただけで……
ただ……
気づいてなかっただけで……
ーーひまりちゃん、知ってる?初恋って実らないんだって。
ーーそっかぁ。
(……あの恋は続いてたのかな?)
混乱してくる頭。
私は、深呼吸をしてから……
「家康……。何で、私に出した夏休みの宿題の答え……知ってるの?」
花火に掻き消されないように。
夜空から消えた……
その、タイミングを見計らって。
少し、声を震わせながら聞いてみる。
また、夏休み前みたいにぐちゃぐちゃに混乱して考えるよりも直接聞いて……新学期を迎えたい。
微かに肩に回された手が動く。
そして……。
「……今、言っても良いの?新学期まで、待って欲しいんでしょ?」
私は、キュッと手を握る。
そして伏せ気味の瞼を持ち上げて……
「……そうだけど。答え合わせしても貰うのまだ、ちょっと不安……で…」
気づいたらそう口が動いてた。
もし、違ったら?
幼馴染にはもう二度と戻れなくなる気がして。壊れてしまう気がして。
それに、同じ気持ちだったら?
私達は、一体どうなるの……。
好きな子。
教えてくれるって。
(……もう、やだよ。タイムカプセルにいれるのは。今までの想い出を)
私は無意識に、
左の耳上のヘアピンに触れる。
三つ葉のマークを
指の感触で確かめるように。