第133章 夏の大三角〜最終章〜(5)
辺り一面海。
何の障害物もない場所。
夜空に舞い上がる花は、咲いては散っていき、力強い音と儚い余韻だけを残して消えていく。
「はい。どうぞ、空いているお好きなシートにお座り下さい」
鑑賞チケットを渡して、中に入る。ぎゅうぎゅうなのかと思えば、ゆったりとしたスペースで区切られ……
いわゆるカップルシート。
みたいな、感じで周りは若い男女が肩を並べて寄り添っていた。
おじさん曰く、屋台の場代を払う時にこの花火大会の運営側から貰ったらしい。使わないから射的の景品にしようか悩んで所だと。
「あそこ、どうかな?周り誰もいないし!」
「俺は何処でも良い。……ほら、手。足元危ないから」
「ありがと……。早く見よう!」
手を差し伸べて、何のためらいもなくそこにひまりは、自分の手を添える。暗闇で見えにくいコンクリートの階段を下りて、俺たちはい草で出来た茣蓙のようなシートに座ると顔を上げた。
ドンッ!……
ドンッ!……。
口を閉ざし
手を繋いだまま
一滴一滴煌めく花火を見上げ
息を呑んで、吐く前に……
パッと消えていく。
綺麗……。
ひまりの口から零れた声。
それが、花火の音より
俺の胸を強く打ち付ける。
(花火より綺麗だし……)
赤、青、緑……
彩に光るひまりの無防備な横顔を見て、俺はそっと繋いでいた手を離す。すると、何で?って書いたみたいにキョトンとした顔がこっちに向いて……
離した手をゆっくりと持ち上げ、
そっと華奢な肩を引き寄せた。
「え……」
(やばい。自分でやって緊張するとか……)
思わず目合わせんの躊躇って、花火見るフリして逸らした顔。
「……綺麗だね」
呟きと同時に
コツン。
肩に感じた軽い重み。