第133章 夏の大三角〜最終章〜(5)
「元気あるね?誰と来たの?お友達?彼氏?」
「ちがっ……!!んんっ……」
違う。
そう言いかけた口元は手で塞がれ……
家康は友達でも、彼氏でもなくて……
(ただの幼馴染でもなくて……私の……っ!)
後ろから体を拘束され、ぎゅっと目を閉じる。
ーー違う……。家康はただの幼馴染なんかじゃない!!
ーーじゃぁ、何だ?彼氏とでも言うのか?
ーーだめ!!私にとって家康は一番大事な幼馴染だから!喧嘩なんかして欲しくない!!
ほんの一瞬で駆け抜けた記憶。
中学一年生になったばかりの頃。
私は、クラスの女子をからかう男子が許せなくて……そしたら、家康が喧嘩して。咄嗟に私は、そう叫んでたのを覚えてる。
だって…。
★貴方にとって私は?「大切な幼馴染」
プロフィール帳にそう書いてあったから。
(家康……っ!)
「暴れないで、大人しくして貰おうか?」
「んんんっ!!」
持っていた巾着が滑り落ちる。
家康はいつも助けてくれた。
私はずっと幼馴染だから。
小さい頃から一緒だったから。
だから、助けてくれるんだって…
思ってたけど。
家康は……
いつだって……
私を見つけて。
「その子に触れていいの。俺だけだから」
ちゃんと伝えてくれてたのに。
今は、胸の奥まで届く。
一度も見せたことないぐらい、
怖い顔して……
私の背後にいる男の人を、
睨みつけていた。