第133章 夏の大三角〜最終章〜(5)
ドカッ!
「やんのかぁ!オッサン!」
突然、暗闇の中から聞こえた男の人の声。私がちょうど駐車場にあるお手洗いから、屋台がある方へ戻ろうとした時だった。
よく目を凝らして声が聞こえた方を見ると……
数人のガラ悪そうな大学生の人が、射的屋のおじさんを取り囲んで居た。異様な雰囲気とさっきの台詞。
私は下駄をカラコロとコンクリートの上で鳴らしながら、
「おじさん!!…大丈夫ですか!?」
尻餅をついて、頬を抑えるおじさんの元に駆け寄る。屈みこんで、支えるように肩に手を置いた。
「さっき、の姉ちゃんか。危ないからあっち行ってな」
「でも!おじさん口から血が……」
「大したことねえさ。ちょっと、客と揉めてな」
「そうそう!俺らが折角楽しく射的してんのに、たまたまオッサンに玉が数発あたったらキレやがってよ!」
ひどい。
たまたまって、おじさん横に退いてるから早々当たったりしないのに。数発って……。どう考えても不自然。
私は、思わずキッと男の人達に目を向ける。
「俺に当てんのは百歩譲っていいがな、子供が近くで見てただろ!いい歳して悪い手本みせやがって!」
「あぁん?たまたまだって、言ってんだろーっ!」
ドカッ!
「うっ……!!」
一人の一番体格の良さそうな人が、おじさんのみぞおちを思いっきり蹴り上げる瞬間を、目の前で見て……
私は怖いとかそんなことよりも先に、声を張り上げていた。
「だ、誰か来てっ!!」
「おっと!叫ばないで貰えるかな?かわい子ちゃん?」
無理矢理腕を掴まれ、その場に立たされる。ニタニタ気持ち悪い笑みで、頭から爪先まで見下ろされ、そこでやっと私の中で恐怖のふた文字が浮かんで来て……
「やめないか!その子は関係ねえ!!」
「やめて!離して!」
掴まれた腕を振りほどこうと、手を動かす。