第133章 夏の大三角〜最終章〜(5)
両サイドに並ぶ屋台。
香ばしい匂いが立ち込め。
くじ引き、ヨーヨー釣り……。
夏祭りの屋台が一層賑わう中。
「花火大会何時?」
「八時からみたい!今、七時だからあと一時間後!」
ひまりは、ひまわり柄の浴衣を着て、本当にひまわりの花みたいに眩しい笑顔を俺に向ける。指輪は巾着の中に仕舞い、胸に子鹿の縫いぐるみを抱きながら、りんご飴を頬張っていた。
昔から変わんない。
でも、昔と全然違う。
俺が付けた印がある首筋を隠すように、髪を横に結った艶がある横顔。腕の中で夢中になってりんご飴食べる姿は変わらない気がして、それでもどこか違う。
(綺麗で可愛い。多分、彼女になっても俺は他の男に嫉妬して……)
そこまで、考えてやめる。
新学期まで待てなくなるから。
「ねぇ、政宗と会うのいつ?」
「え?えっと、明後日だよ?お土産ついでに渡そうと思って、日にち変えて貰ったから」
(明後日……。予備校ある日)
ひまりは赤いりんご飴を時折、ペロペロ舐めながら、政宗とは旅行前に逢う約束をしていたと、前日だとゆっくり出来ないから変更したことを、話す。
(まだ、会うなって言えないし)
早くその権利くれる?
思わず恨めしそうに視線を向けると、ひまりは俺とりんご飴を交互に見て、食べる?とか、聞いてくる。
(はぁ…。鈍感なのは一生治らなさそう)
「食べたいんじゃないの?美味しいよ?」
「……間接になるけど良いの?」
へ!///
わざと耳元に寄せて聞けば、しどろもどろに困ったように、慌て出すひまり。
鈍感なのは治せなくても。
意識はさせれるから、まだ良い方かも。俺はニヤッと笑った後、口を開けてガブッとかぶり付く。
「あぁーっ///やっぱりだめ!食べちゃ!」
「……カリッ。…もう、食べたし」
ご馳走様。
抱いてる子鹿の縫いぐるみみたいに、
ぷるぷる震えて……
林檎みたいに真っ赤になって。
りんご飴じっと見て、食べようか食べないか腕の中で悩む姿。
可愛くて堪んないだけど。
早く食べさせてよ。
そっちの赤いのも。
一応まだ、その言葉は言わないであげる。