第22章 「苺のポッキー(4)家康様編」家康様side
「何で!何で、こんな事するの!」
窓のカーテンが風に靡いて、ひまりの長い栗色の髪がサラサラと揺れる。
真っ赤になって、
唇を噛み締めて、
困り顔しながら、
声だけは気持ち怒ってて。
微かに潤ませた瞳が、切なげに揺れた。
(……しんじゃうよ。俺)
何でか解ってない癖に、すぐ心臓に悪いことばっかりして。
表情と声だけで全部の感情……
いっぺんに出してくる女なんて
……絶対ひまりしかいない。
(そっちこそ、俺の心臓)
何でそんな簡単に鳴らしたり、止めたり出来んの?
こっちが聞きたい。
(ポッキー咥えて、日誌に俺のこと書いてたら我慢なんて出来ないし)
俺は指で風に靡くひまりの髪を、掬い取る。
苺みたいな甘い香りが鼻先を掠め、サラサラ流れて指に絡む前に、滑り落ちた。
「……俺が何でひまりにこんな事するか、知りたい?」
「もし、からかうのが面白いからとか、そんな理由だったら本気で怒るからね!」
ひまりはさっき差し出したポッキーを俺の顔に向け、頬を膨らませる。