第133章 夏の大三角〜最終章〜(5)
夏の風物詩。
海で開かれる花火大会。
ズラリと並んだ屋台。
「全然、進まないし」
人混みが苦手な家康は、早くもウンザリ。
でも……
ちょっとだけ勇気を出してみる。
(緊張するけど、たまには……)
私から。
いつも繋いでくれるのは、家康から。
もし、私から繋いだら……
ドキドキしてくれるかな?
いつも私がするみたいに。
家康の左手。
震えながら……
チョンッ。
触れてみる。
「……っ!」
バッと顔を動かす家康に、
「す、すぐに迷子になっちゃうから…」
ビックリしたみたいに目を見開くのを見て、恥ずかしくて堪らないけど。
消えてしまいそうな声で、
言い訳みたいなことしか言えないけど……
(が、頑張れ!///)
ぎゅっ。
それでも勇気を出して、自分から手を繋ぐ。
そしたら、すぐに握り返してくれて。
つい、ホッとして俯いて笑ったら。
「ひまり……」
名前を呼ばれて。
上を向けば。
「浴衣、似合ってる」
赤くなった目元。
いつもなら絶対、隠すのに。
真っ直ぐ笑顔が降りてきて。
「勇気……。気持ちだけ貰っとく」
繋いだ手。
家康は一度だけ強く握ると、
優しく解く……
「ひまりに、誰も触れて欲しくないから……」
今日は、こっち。
肩に回された大きな手。
すっぽり収まった、家康の腕の中。
そこから聞こえた心臓の音。
私の心臓の音と同じ音がして……
「……あんまり、聞かないでよ」
今度は私が勢い良く顔を上げる番。
少し困った顔をして、照れ臭そうに言う家康は……
私の中で完全に男の子に、変わっていた。