第132章 夏の大三角〜最終章〜(4)
その日の夕方。
一旦、ホテルに戻るとあのおばあさんがソファに座っていて……切なそうに庭園を見ていた。
「ひまり?」
気になって立ち止まると、家康が私の顔を覗きこむ。
「ごめんね。先に部屋行ってて!ちょっとおばあさんと話してくるから」
「わかった。じゃぁ、荷物持ってくから貸して」
ありがとう!
家康にお礼を言ってから、差し出された手に鞄を預けると、私はおばあさんに軽く声をかけて、隣に座る。
(まだ、夜まで時間あるし!大丈夫だよね!)
二日目の夜は、札幌市内でご飯を食べて、念願のライトアップタワーに昇る予定。大人組が帰って来るまでの間、家康もやりたいことがあるから、部屋で休むって言ってたしね。
私も、おばあさんと話がしたかった。
「オルゴール直りました?」
「それがねぇ。大分、古い物だから部品がもう手に入らないみたいなんだよ」
おばあさんは心底残念そうな声でそう言うと、オルゴールを手でそっと撫でる。
そして……ポツリポツリとそのオルゴールの思い出話を聞かせてくれた。
話を聞き終わった私は。
「ひまり!?」
もう、迷いなんて何も無くなっていた。