第130章 夏の大三角〜最終章〜(2)
小樽の温泉宿ホテル。
白い暖簾を潜り、中に入れば落ち着いた雰囲気の和の空間が広がり、漆塗りの柱に天井。
ホテル従業員も和装、フロア一面ガラスからは四季の庭園。
「家康!ツルツル美肌の湯だって!!」
父さん達が予約確認をフロントでしている隙に、ひまりはあっち行ったりこっち行ったり……一人で探索して、きゃぁきゃぁ喜ぶ。
俺は気づかれないように、
一瞬だけ口元を緩ませ……
「あ!あっちに売店発見!」
「少しは、じっと出来ないの?」
俺は前を通り過ぎて、売店に向かって今にも走り出しそうなひまりの手首をつかまえる。
「高校生にもなって、走り回るとか。お子ちゃま?」
「むぅ〜〜っ!」
(嘘。可愛いけど)
ハムスターみたいに膨らんだ頬っぺた。手首を離して軽く突こうとした時。背後からポンっと叩かれ俺は、反射的に振り返る。
すると、頬を引きつらせ
「家康くん!今夜はゆっくり語ろうじゃないか!」
声は明るいけど、どう見ても威圧的な空気を出してるおじさん。俺が苦笑いする横で、ひまりは何を語るの??と、不思議そうに聞いてくる。
(俺が聞きたいし)
「ほらっ!若い二人の邪魔しない!」
「今夜は、ゆっくり温泉入って〜お部屋で夕飯〜明日から観光楽しみましょう!も、ち、ろ、ん別行動でね?」
おばさんが凄い勢いで、おじさんの耳を引っ張って引きずってく横で、母さんは俺に意味深なウィンクしてくるし。何なの、ほんと。
「明日!いっぱい観光しようね!」
ひまりは嬉しそうに笑い、ガイドブックを自分の顔の前に近づける。
(いつの間にか付箋だらけになってる)
わかった。
俺は、たった一言。
それなのに、
「楽しみだね?」
無茶苦茶可愛い顔して、笑うとか。
新学期まで待てなかったら、責任とってよ。
「何で、そんな目で見るの?」
「……教えない」
「すぐ、そうやって……あ……」
ひまりは部屋に向かう途中。
急に立ち止まる。