第129章 夏の大三角〜最終章〜(1)
早朝から飛行機に乗り、
『徳川家』『姫宮家』の両家、
合同家族旅行の行き先は……
「着いたぁー!でっかいどう!」
「恥ずかしいから、やめなって」
新千歳空港を出た瞬間。
ハイテンションで叫ぶ私の頭を、ガイドマップで家康は小突く。私は立ち止まりくるりと向き直ると、だって、北海道だよ!日本で一番広いんだよ!と、声を上げる。
興奮気味な私と違って、家康はハイハイと、軽い返事するとカラカラと深緑のキャリーバックを引いて、スタスタ前を歩いて行く。
「もうっ!ノリ悪いんだから!」
「ふふ〜アレでも昨夜は楽しみで仕方無かったのよ〜珍しく早く寝てたみたいだから〜」
「それより、ひまり!ちゃんと、前向いて歩きなさい。只でさえそそっかしいんだから!」
はーい。
お母さんに注意され、素直に返事。
そして歩き始める前に、大きく一度だけ深呼吸をする。
もう、気づけば夏休み後半。
こうして両家で合同家族旅行に来たのは、本当に久しぶり。確か、私の記憶が正しければ最後に行ったのは、小学校低学年の時だったかな?
でも、飛行機に乗っての旅行は初めてで!ましてや、北海道なんて!
それに、
「ひまり、何してんの。行くよ」
今は、呆れた顔まで格好良く見えるから、ほんと不思議。
思わずニヤけそうになる頬を押さえながら、小走りでキャリーを引き家康の隣に並ぶ。
春には、高校三年生になる私と家康。
来年の夏休みは、受験や就職活動で忙しいだろうからって、おばさんとお母さんがこの旅行を計画してくれて。
(二泊三日も、一緒にいれる)
今の私には違う意味でも楽しみ。
家康も同じ気持ちだったら、
もっと嬉しいんだけど……
チラッと視線を向ける。
いつもと変わらず、平然とした表情。レンタカー場所に向かって前方を歩くおじさんとお父さんの背中を見つめ、一切余所見せず、足を動かす家康。