第127章 『熱い視線』
口から吐き出た海水。
薄っすら目を開ければ、政宗が心配そうな表情で私を見下ろしていた。
「大丈夫か?」
「私……確か、溺れて……」
でも、何で政宗が?
薄れゆく意識の中、確かに家康の姿が見えたはずなんだけど……。
ゆっくりと身体を起こし、少しずつはっきりしてきた意識の中、状況を考える。
(えっと、溺れて、意識なくしかけて、家康が見えて、海水が口から出て、でも政宗が今、目の前にいて……)
「政宗が助けてくれたの?」
「……半分な」
半分??そう聴き返すと、何故か政宗はぎごちなく笑って、私の背中をさすってくれる。
「全部、吐き出せたか?」
「え!///も、もしかして人工呼吸……し、てくれたの?///」
「何だ?俺じゃ嫌だったか?」
微かに残る唇の感触。
いくら緊急事態で意識がない中とは言っても、人工呼吸の仕方は知識として知っている。
私はかぁっ///と熱くなる頬に手を当て、ごめんねって政宗に謝ろうとした時。
「無理無理無理ーーっ!な、なんで俺がぁぁ!!」
家康の断末魔みたいな叫び声が、すぐ近くから届いてハッとする。
「え!?何で船の上に!?」
「そこは気にするな。それより……クッ……面白いもんが見れそうだ」
???
政宗の視線の先を追う。
すると横たわる三成くんのすぐ側で、今にも泣き出しそうな顔で……
「つべこべ言わず、やれ」
「医者への第一歩だ」
「部員を助けるのが、部長の務めだろ?」
先生二人と秀吉先輩に押し付けられて、今、まさに三成くんに人工呼吸を強制させられる?する家康がそこに居た。
「あぁぁあぁーーーーっ!!」
私はポカーンと口を開ける。
暫くすると、クスリと笑みが零れた。
見てはいけないものを見たような?
(頑張れ!未来のお医者さん)
家康の叫び声?
断末魔?
雄叫び?
広い広い海に広がって……
遥か遠くまで響き渡った。