第127章 『熱い視線』
そして再び、
隣のプライベートビーチに戻り。
波打つ海。
ゆっくりと動き出した船舶。
舵をとるのは秀吉。
光秀は望遠鏡に目をあてる。丸いレンズの向こうに、家康達を発見した。
「いざ!!」
太陽の光を全身に浴びながら、甲板の先端に仁王立ちし、黒髮を海風に波風信長が声を高らかにあげた。
ーーーーーーーー
刻々と船が迫る中。
「あ!!……」
政宗がトスをあげたビーチボールがひまりの後方に飛んでいく。
波にさらわれどんどん離れていくのを見て、ひまりは急いで取りに向かった次の瞬間……
大きく波が揺れ……
自分の身長を遥かに超える、
高い波が押し寄せた。
そして頭上から
思いっきりかぶり……
ザバァァー……
(……っ!)
波に飲み込まれたひまりは焦り、変に足に力を入れてしまい、右足に痛みが走る。
(く、るしい……っ)
必死に手をバタつかせもがくが、体勢が丸くなり体がどんどん沈んでいく。
「ひまり!!」
一番近くにいた家康が、ひまりが溺れたこといち早く気づき、急いで助けに向かう。そして二番目に気づいた、三成。
「ひまり先輩!!」
家康同様海に潜り泳ぎ始めるが、日頃の不規則な生活をしているからか、
「ブクブクブク……」
「おい、三成!!」
自分も溺れるという始末。
政宗はひまりを助けに向かいたい所だが家康の方が早そうだと諦め、浅手でにも関わらず溺れる三成を見て、やれやれと肩を竦め渋々助けに向かった。
砂浜にいた副部長と弓乃もその四人の様子に気づき、立ち上がってあたふためくが、
「な、何あれ!!!」
「あの家紋……まさか顧問の織田先生じゃ!?」
ゆらゆらと波を作り現れた、一台の船。二人は信じられないと言ったように目をパチパチとさせ、信長ならあり得るかもとも同時に考え、口をあんぐり開けた。
(もう……だ……め……)
ブホッ、と海の中でひまりは息吐き……
薄れゆく意識の中。
(い、えや……す……)
自分に向かって手を伸ばす家康を、見た気がした。