第127章 『熱い視線』
プライベートビーチ。
それはセレブだけが許される所有地。
ひまり達が海水浴を楽しんでいる、すぐ岩を超えた先にそのビーチはひっそり。いや、堂々と存在した。
「秀吉。今すぐひまりを呼んで来い」
「はっ!……しかし、昨晩。家康に断られたのでは」
「クッ……信長先生は、ひまりさえ来れば構わないからな」
信長は輝くパラソルの下、優雅なリクライニングチェアーに座り、足を組む。手すりに寄りかかり赤と黒のリバーシブルのパーカを逞しい上半身に羽織、赤い血肉のようなカクテルを口の中に注ぐと……
「あれに乗って、迎えに行くとするか」
気分が変わった。俺も行く。
信長はニヤリと口角を上げ……
掛けていたサングラスを、頭に乗せると何かを合図するように、指をパチンと鳴らす。
すると、静まり返っていた海に……
「なっ!!あれは!!」
「……船舶。流石、信長先生」
黒い船体に赤い帆。
織田信長の家紋。
前方には木瓜紋が描かれた旗が掲げられ、ドクロマークはないものの……まさに海賊船のようだ。
(あれで迎えに行けば、間違いなく大騒ぎに……)
秀吉は苦味を潰しつつ、信長に至っては何の問題もないのだろうと思い、二人には聞こえないよう密かに、息を吐いた。