第127章 『熱い視線』
俺は、さっきはめた浮き輪をすぽっと抜き取る。それに反応して顔を上げるひまりの腕を掴み、行くよとだけ言って、そのまま海に向かって突き進む。
「え!?ま、待って浮き輪……」
「いらない。俺にしがみ付けば問題ない」
水着姿見たいのに。
振り返れない。
こんな顔見せれないし。
(ヤキモチとか、嬉し過ぎて俺のがやばい///)
相変わらず天邪鬼な俺。
海で冷やしてから存分に見ようと決め、浅い場所で水を掛け合う政宗達の後ろを素通りして……
海の奥へと進む。
俺の肩ぐらいの深さまでくると、
「ま、待って!早いよ」
足がもう付かなくなったひまりは、立ち泳ぎしながら俺に必死に付いてくる。
「ほら、意地張ってないで掴まりな」
「別に意地はってないもん!」
まだ、拗ねてる。
「あっそ。なら、あそこの岩まで競争」
挑発する様にニヤリと笑えば負けず嫌いなひまりは、一足先に泳ぎ始め、スイスイと綺麗なフォームで岩に向かう。
けど、
岩に触れ、折り返した地点で……
「うぅ……」
「最初から素直に言うこと聞けば、いいのに」
体力消耗して力尽きたひまりは、俺の首に腕を絡め、波にあぷあぷしながら恨めしそうに睨む。
(そんな顔しても可愛いだけ)
俺は、細い腰に腕を回して目線の高さまで持ち上げひまりを支える。
(ってかあんまり余裕ぶってると、俺のがマズイかも)
「い、えやす…っ浮き輪取りに戻ろう」
「だーめ。勘違いして拗ねた罰」
「拗ねてな、いもんっ!」
「へぇ。どの口が言ってんの?」
コレ?
ふにっと指で押すだけで、途端に赤くなるのが本気で可愛い。前だったら、露骨にヤキモチ焼くとかなかったし。
けど、結局。
「きゃぁ!///ひ、紐緩んできたっ///」
「ちょ///急に暴れたら!」
ぎゅうぎゅうしがみ付かれ、
「早く結んで///」
(やっば///手、震えるし)
眩しぐらい白く研ぎ澄まされた、素肌。
くるりと向けられた背中に、俺の視線が突き刺さった。